先日、私たち「WineBar幸」と、同じ建物下の「尾張会席誠名」との毎月開催しているコラボイベントを開催しました。
1月の食材は冬の味覚の王とも称される『蟹』です。
和食の世界では日本酒と合わせることが多く、「蟹には白ワイン」という固定観念をお持ちの方も多かったと思います。実際、私自身も“繊細で甘みのある蟹には白”という先入観がありました。しかし今回のイベントでは、その思い込みを良い意味で裏切る、驚きと発見に満ちた時間となりました。
本コラムでは、当日の料理とワインの流れを振り返りながら、和食に寄り添う日本ワイン、そして蟹料理と赤ワインの可能性についてお伝えします。
① 先付
かに吉野 海老芋唐揚げ 芽葱
最初の一皿は、冬らしい温かみのある先付から。葛でとろみを付けたかに吉野は、蟹の旨味が優しく広がり、そこに海老芋の唐揚げの香ばしさが加わります。芽葱の清涼感が全体を引き締め、まさに会席料理らしい導入です。
この一皿で、「今日は繊細さだけでなく、旨味をどう受け止めるかが鍵になる」と感じさせられました。

② 寿司
かに蒸し寿司
ペアリング:島ロゼ 2023 スパークリング
(日本/愛媛県・大三島みんなのワイナリー)
品種:マスカット・ベーリーA、メルロー
ふっくらと蒸し上げたかに蒸し寿司に合わせたのは、日本ワインの中でも個性が光るロゼのスパークリング。島ロゼは、ベーリーA由来の優しい果実味と、メルロー由来の骨格が共存した一本です。
蟹の甘みと酢飯の酸に、きめ細やかな泡と穏やかな酸が寄り添い、口の中を軽やかにリセットしてくれます。
「和食にロゼのスパークリング」という選択が、ここまで自然に馴染むことを改めて実感しました。まさに和食に寄り添う日本ワインの好例です。
③ 焼き物
かに焼き かに酢 塩
ペアリング:2023 高畠バリック ピノ・ノワール
(日本/山形県・高畠ワイナリー)
ここで、今回のイベントの象徴ともいえるペアリングが登場します。
「蟹 × 赤ワイン」という、多くの方が意外に感じた組み合わせです。
香ばしく焼き上げた蟹の身、ほのかな焦げの香り、そしてかに酢の酸。そこに寄り添ったのが、樽熟成を施したピノ・ノワールでした。
高畠のピノは、果実味が前に出すぎず、酸とタンニンが非常に穏やか。蟹の旨味とぶつかることなく、焼きの香ばしさをふくらませてくれます。
参加されたお客様からも
「赤ワインがこんなに合うとは思わなかった」
という声が多く、私自身も固定観念を改めさせられた瞬間でした。

④ 汁物
甲羅味噌焼き
ペアリング:オークベール レッドブレンド NV
(オーストラリア/ハンターバレー)
締めくくりは、濃厚な甲羅味噌焼き。ここではあえて日本ワインではなく、オーストラリアの赤ワインを合わせました。
シラーズやグルナッシュ主体のブレンドは、コクとスパイス感があり、甲羅味噌の強い旨味をしっかりと受け止めます。
日本ワインの繊細さとは対照的に、世界のワインの表現力を感じるペアリングとなり、イベント全体に奥行きを与えてくれました。

蟹料理とワインの新しい可能性
今回の『蟹料理×ワインペアリングイベント』を通して強く感じたのは、
「蟹=白ワイン」という思い込みを外すことで、世界が広がるということです。
特に、日本の風土で造られる日本ワインは、出汁文化を持つ和食との相性が非常に高く、赤ワインであっても主張しすぎず、料理に寄り添う懐の深さがあります。
改めて、日本ワインの可能性、そして和食に寄り添う日本ワインという価値を再確認できたイベントでした。
尾張会席誠名の繊細かつ芯のある蟹料理と、WineBar幸が提案するワインの世界。その交差点に立ち会えたことを、心から嬉しく思います。
今後も、固定観念にとらわれないペアリングの楽しさを、皆さまと共有していきたいと思います。
ご参加いただいた皆さま、そして誠名の皆さま、本当にありがとうございました。