日本ワインの歴史を知ろう!

2025年9月3日

日本ワインは今や、国内外で高い評価を受ける存在になりました。
しかし、その歩みは決して平坦ではなく、気候風土への挑戦、海外技術の導入、造り手たちの熱意によって形づくられてきたものです。
一本のワインを手に取るとき、その背景にある歴史を知ることで味わいはより深くなります。
ここでは、日本ワインがどのように生まれ、育ってきたのかをたどってみましょう。

 

明治時代:日本ワインの誕生

日本でワイン造りが始まったのは、明治維新直後の殖産興業政策がきっかけでした。
西洋文化を取り入れ産業を育成しようとする流れの中で、政府はぶどう栽培とワイン醸造を推奨します。

1870年には、山梨県甲府で「ぶどう酒共同醸造所」が設立されました。
しかし、技術が未熟で品質が安定せず、長くは続きませんでした。

その後、1877年に山梨県勝沼(現・甲州市)で「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、土屋龍憲と高野正誠の2人がフランスに渡り、醸造技術を学んで帰国。
これにより、日本ワインの基礎が築かれます。
甲州という日本独自の品種をワインに仕立てようとする試みは、この時期から始まっていたのです。

また、新潟県高田(現・上越市)の川上善兵衛は、のちに「日本のワインぶどうの父」と呼ばれます。
彼は欧米品種と日本の気候に合うぶどうをかけ合わせ、1万種以上の交配実験を行いました。
その成果として生まれたのが、現在も日本ワインの代表品種のひとつである「マスカット・ベーリーA」です。

戦前から戦後へ:困難と再出発

大正から昭和初期にかけて、ワイン造りは次第に広がりますが、国内の需要はまだ限定的でした。
ビールや日本酒の方が庶民に親しまれており、ワインは特別な場面でしか口にされません。
さらに戦時中はアルコール需要が軍需に優先され、ワイン産業は大きな打撃を受けます。

戦後、復興とともに日本人の食生活が多様化し、洋食文化の広がりとともにワインが少しずつ受け入れられるようになりました。
輸入ワインが市場に入り始めたことも、日本人がワインを身近に感じるきっかけとなります。

 

高度経済成長期とワインブーム

1960年代から70年代にかけて、日本は高度経済成長を迎えました。
外食文化が拡大し、レストランやホテルでワインを楽しむ習慣が定着していきます。
この頃には「第一次ワインブーム」とも呼ばれる現象が起き、ワインが贅沢な嗜好品として注目されました。

さらに1980年代にはバブル景気の影響で「ワインはおしゃれ」というイメージが広がり、輸入ワインも含めて急速に需要が拡大。
ワインは富裕層だけでなく、都市部の一般家庭にも少しずつ浸透していきました。

 

近年:品質重視と多様化

1990年代以降、日本ワインは大きな転機を迎えました。
かつては輸入ワインをブレンドした製品が多かったのですが、2000年代に入り「日本ワイン」という呼称が制度的に整理され、日本国内で栽培されたぶどうのみを原料とするワインが改めて注目されるようになりました。
品質や土地の個性を重視する動きが広がり、主要産地ごとに特徴的な発展が見られます。

例えば楠わいなりーの「スペシャルキュベ 樽熟成シャルドネ 2020」は、長野県で育ったシャルドネを樽でじっくり熟成させた一本。
リッチな味わいと深みのある香りは、まさに“国産ぶどうのポテンシャルを引き出す”現代の日本ワインの象徴といえるでしょう。

産地ごとの発展

・山梨県・勝沼
日本ワインの聖地とも呼ばれる地域。明治時代から続く老舗ワイナリーが多く集まり、甲州ブドウを中心に歴史と伝統を守りながら進化を続けています。

・長野県
千曲川ワインバレーや桔梗ヶ原を中心に小規模ワイナリーが増え、欧州系品種を使った個性豊かなワインが生まれています。その一例が「ドラゴン ピノノワール 2023」。
冷涼な気候を活かしたフレッシュな酸味と赤い果実のニュアンスが調和し、長野ワインの特性をしっかりと感じられる一本です。

・北海道
特に余市や空知地方が有名で、冷涼な気候を生かしたピノ・ノワール、ツヴァイゲルトレーベ、ケルナーなどが高い評価を得ています。
国際的なワインコンクールでも受賞が相次ぎ、世界から注目される産地へと成長しています。

国際的評価

2010年代には日本ワインが世界のコンクールで受賞する事例も増えました。
甲州の繊細な味わいや、マスカット・ベーリーAの個性は「日本ならではのワイン」として海外からも高い評価を受けています。

また、インバウンド観光の増加により、訪日客が日本ワインを楽しむ機会も拡大。
ワイナリーツーリズムも盛んになり、産地を訪ねる人が増えています。

 

歴史を知ることで味わいが変わる

日本ワインの歴史は、挑戦と工夫の積み重ねです。
気候の壁に挑んだ造り手、品種改良に人生を捧げた研究者、土地を守り続けてきた農家。その歩みを知ると、グラスに注がれた一杯のワインに込められた背景が浮かび上がります。

「なぜこの味がするのか」「なぜこの土地で育ったのか」。
そうした問いに歴史が答えてくれます。ワインを味わう時間が、単なる嗜好から文化を感じるひとときへと変わるのです。

 

これからの日本ワインに期待すること

これからの日本ワインは、さらに進化していくでしょう。

  • テロワール(土地の個性)の追求

  • 環境にやさしい栽培・醸造

  • 日常に寄り添うワイン文化の拡大

造り手たちが積み重ねてきた歴史を土台に、新しい挑戦が続いています。

歴史を味わう一杯を

歴史を知って飲む日本ワインは、ただの嗜好品ではなく“物語を味わう時間”へと変わります。
楠わいなりーの「キュベマサコ 2021」は、その象徴的な存在。
柔らかな果実味とエレガントな余韻は、土地を大切にする造り手の想いを伝えてくれます。
食卓を囲む時間に、ワインの歴史とともに心に残る一杯になるでしょう。

 

この記事でご紹介したワインは、当店のオンラインショップからもお求めいただけます

スペシャルキュベ 樽熟成シャルドネ 2020

長野県産シャルドネを樽熟成させた、リッチで複雑な味わいが魅力の一本。

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ドラゴン ピノノワール 2023

冷涼な気候を活かしたフレッシュな酸と果実味がバランスよく調和。
長野ワインらしさを感じられる赤。
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キュベマサコ 2021

優良年のみ仕込まれる特別なシリーズ。エレガントで芳醇な香りが特徴。

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