― 秋の香りとワインが織りなす、唯一無二のマリアージュ ―
秋の訪れを象徴する食材といえば、「香りの王」松茸。その芳醇な香気と深い旨味は、日本料理の中でも特別な存在です。少し前になりますが9月28日(日)、WineBar幸では松茸を主役とした「松茸×ワインペアリングイベント」を開催し、日本の秋の味覚と、WineBar幸が厳選したワインが響き合う一夜をお客様にご提供しました。
本イベントでは、松茸料理4品に対して4本のワインを厳選。それぞれの料理の香り・食感・旨味を最大化しながら、ワインならではの酸・果実味・ミネラル感を掛け合わせ、これまでにない味わいの広がりを生み出しました。各料理とワインを詳しくご紹介しながら、そのペアリングの魅力をあらためてお伝えします。
■①先付
松茸・水菜・菊花のお浸し × リースリング/ピノ・グリ 2022(楠わいなりー・長野須坂)
イベントの幕開けは、秋の色彩を映した「松茸・水菜・菊花のお浸し」。出汁の旨味が松茸の香りをやさしく引き立て、水菜のシャキッとした歯触り、菊花の軽やかな苦味がアクセントになった、非常に繊細な一品です。
合わせたワインは、長野県・楠わいなりーの リースリング/ピノ・グリ 2023。
リンゴや白桃、洋梨、オレンジといったフレッシュな果実の香りが次々と現れ、ディルのようなハーブや紅茶のニュアンスが複雑さを添える、日本ワインの魅力が詰まった一本。清々しい酸が料理の繊細な味わいを壊すことなく、水菜や菊花のほろ苦さと見事に調和します。
松茸のお浸しは、香りを強く主張しすぎない“入り口の一皿”であるため、アロマティックでありつつも過度に主張しないこのワインが最適。料理全体を軽やかにまとめ、次の料理へと期待をつないでくれるペアリングとなりました。


■②先付(ワイン2)
松茸・水菜・菊花のお浸し × クレマン・ド・ロワール・ロゼ NV(ギィ・アリオン)
同じ先付ながら、異なるワインを合わせることで“香りの重なり方の変化”を楽しんでいただいたのも今回のイベントの特徴です。
こちらで用意したのは、フランス・ロワール地方の クレマン・ド・ロワール・ロゼ。カベルネ・フラン100%で造られるロゼスパークリングワインで、オレンジがかったピンク色が美しい一本です。
ベリー系の果実感と、カベルネ・フラン由来のほんのりとした土の香りが、松茸の風味と驚くほど自然に寄り添います。松茸の香りが溶け込んだ出汁とロゼの土壌的ニュアンスが重なり、より深い香りのレイヤーを生み出すペアリングとなりました。
クレマンはシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵製法で造られる格式あるスパークリング。きめ細やかな泡が、出汁の旨味を引き立てながら口内をリフレッシュし、前半のコースのテーマである「香りの広がり」を美しく演出してくれました。

■③焼き物
焼き松茸 すだち添え × ソウマ ピノ・ノワール 2023(オーストラリア/ヤラ・ヴァレー)
シンプルな調理で松茸の香りを最もダイレクトに体感できるのが、この“焼き松茸”。炭火でじっくりと焼き、水分が適度に抜けることで香りが一層凝縮。すだちの酸がキュッと全体を引き締め、噛むほどに土壌香の奥深さが広がる一品です。
これに合わせたワインが、ヤラ・ヴァレーの ソウマ ピノ・ノワール 2023。
紫がかった淡いルビーの色調、熟したいちごやバラ、クローブの香りが繊細に広がります。ピノ・ノワール特有の優しい酸と、ユーカリのような清涼感が松茸の香りと見事に響き合い、焼き松茸の香りの立ち方を一段と華やかにしてくれます。
ピノ・ノワールの“赤い果実のニュアンス”は松茸の上品な香りと調和し、すだちの酸ともバランスよくマッチ。繊細な和の焼き物に赤ワインを合わせるという冒険的な提案でしたが、多くのお客様が「これがベストペアリングだった」と驚かれるほどの相性を見せました。

■④揚げ物
松茸フライ・蓮根フライ × ロッソ・デイ・ノートリ 2023(トゥア・リータ/トスカーナ)
サクサクの衣から立ち上る松茸の香りが食欲を刺激する松茸フライ、そして蓮根フライのほくほくとした食感。この“揚げ物の熱”が香りの立ち方を一段と強め、松茸料理の中でも特に満足感の高い一品です。
合わせたワインは、イタリア・トスカーナの ロッソ・デイ・ノートリ 2023。
サンジョヴェーゼ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーがブレンドされた、果実味とスパイス感が魅力の赤ワインです。バラやカシス、ブラックチェリーに加え、針葉樹のような香りや大地を思わせる鉄のニュアンスが松茸の香りと驚くほど響き合います。
タンニンは柔らかく、揚げ物との相性も抜群。油分をワインが軽やかに洗い流しつつ、果実味が松茸の香りを膨らませ、蓮根の甘味と自然に溶け合うペアリングとなりました。

■“松茸×ワイン”が生む新しい和食体験
今回のイベントを通じ、多くのお客様が「松茸とワインの相性は想像以上」と驚かれました。松茸の持つ土壌香・ミネラル感・旨味は、ワインのテロワールと呼応し、料理とワインの境界が溶け合うような立体的な味わいを生み出します。
ワインと和食のペアリングはまだ新しい分野ですが、今回の4品と4本のワインが示してくれたのは、両者が出会うことで生まれる無限の可能性。そして、季節の移ろいを香りで感じる日本料理だからこそ、ワインとの相性がより豊かに広がるのだと確信しました。
今後も旬の食材と世界のワインを組み合わせ、皆さまに新しい驚きと発見を届けるイベントを企画してまいります。
“香りの秋”を象徴する松茸と、ワインが奏でる多彩な表情。その特別なマリアージュを味わってくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。