信州たかやまワイナリーの哲学と挑戦

2025年11月22日

信州の大地と歩む、静かな情熱

長野県北部、北信地域に位置する高山村。この地に根を下ろす「信州たかやまワイナリー」は、日本ワインの可能性を静かに、しかし確実に広げ続けている存在です。北アルプスを望み、四季の移ろいがはっきりと感じられるこの土地は、冷涼な気候と昼夜の寒暖差、水はけの良い土壌に恵まれており、ぶどう栽培に適した環境が整っています。

 

果樹栽培適地 高山村で目指す世界基準ワイン

高山村一帯は、古くから果樹栽培が盛んな地域として知られてきました。特にリンゴやモモ、そしてブドウは、代々受け継がれてきた技術と知恵によって育まれてきました。そうした歴史と文化が息づく土地において、信州たかやまワイナリーは「世界に通用する品質の日本ワイン」を目指し、本格的なワインづくりに取り組んでいます。

このワイナリーの醸造責任者である鷹野さんが大手ワイナリーで長年にわたり醸造および品質管理の分野に携わってきた経験から培った、科学的な知識と現場での感覚を融合させた徹底した管理体制が、現在の信州たかやまワイナリーの礎となっています。ブドウの状態、糖度や酸のバランス、発酵温度、熟成環境など、あらゆる工程において細かな確認と判断が重ねられ、妥協のないワインづくりが行われています。

 

 

特に重要視されているのが、畑での仕事です。剪定、収量の調整、房の間引き、収穫のタイミングに至るまで、一房一房に目が行き届くよう丁寧に管理されています。自然の力に寄り添いながら、ぶどう本来の個性を最大限に引き出すその姿勢には、作物への深い敬意と、ワインづくりへの強い愛情が感じられます。

 

ぶどうの個性が輝くラインナップ

信州たかやまワイナリーのラインナップは、冷涼なこの土地の特性を活かした品種を中心に構成されています。看板商品の「ヴァラエタルシリーズ」では、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー&カベルネ、ピノ・ノワールなど、それぞれの品種の個性が、テロワールとともに丁寧に表現されています。共通して感じられるのは、澄んだ酸味とミネラル感、そして過度な装飾のない、自然な果実味です。

 

 

白ワインは、柑橘類や白い花を思わせる香りと、美しく伸びのある酸が特徴で、どこか静けさのある上品な味わいに仕上がっています。ほんのりと感じられる塩味のニュアンスは、和食との相性の良さも感じさせてくれます。一方、赤ワインは果実味と酸、タンニンのバランスが美しく、力強さよりもエレガントさが際立つスタイルです。料理とともに楽しむ中で、ゆっくりと表情を変えていく味わいは、日常の食卓にも寄り添ってくれる存在です。

また、信州たかやまワイナリーの挑戦的な取り組みとして「ラボシリーズ」があります。このシリーズでは、少量生産を前提に、通常とは異なる手法での醸造が試みられています。野生酵母による発酵、異なる樽での熟成比較など、さまざまなアプローチを通じて、新たな可能性が探られています。同じ条件のものが二度と生まれないこともあり、まさに一期一会のワインと言える存在です。これらの挑戦が、ワイナリー全体の技術向上にもつながっています。
他にも高山村内の酒販店でしか購入できないワインなど、それぞれに特徴や魅力のあるワインが生産されています。

 

印象的なラベルデザイン

そして、信州たかやまワイナリーを語るうえで欠かせないのが、ヴァラエタルシリーズの印象的なワインラベルの存在です。このラベルは多くの人から高い評価を受けており、ワイン専門誌『ワイン王国』の企画では、264アイテムの中から4位に選ばれた実績もあります。味わいだけでなく、視覚的な美しさでも多くの人を魅了しているのです。


このラベルを手がけたのは、maycaさんというアーティストです。このデザインを制作したのはまだ15歳の頃で、中学3年生という多感な時期に描き上げられたラベルには、生産者の想いや信州高山の自然への深い共感が込められています。
高山村に広がる満天の星々のエネルギー、そして夜と夜明けの狭間に広がる白んだ空が、美しいグラデーションで表現され、さらにラベルに用いられた紫色は、ブドウだけでなく、この土地に実るすべての果実や植物、自然そのものへの敬意を表しています。果実たちが星のエネルギーを受け取り、輝きながら人々に幸せを届けていく――そんな情景が、一枚のラベルの中に静かに描かれています。

 

信州の大地のようなやさしさと力強さを感じる1杯

信州たかやまワイナリーの魅力は、派手な演出や言葉ではなく、自然と真摯に向き合う姿勢にあります。四季の変化に耳を傾け、その年、その畑、そのブドウと丁寧に向き合いながら、一本一本のワインが時間をかけて造られています。そのボトルの中には、土地の記憶と人の想いが静かに息づいているように感じられます。

日本ワインが確かな進化を遂げつつある今、信州たかやまワイナリーは、その流れの中で着実に存在感を高めています。一度そのワインを味わえば、きっと感じられるはずです。そこには、「ここでしか生まれない味わい」と、「人の手のあたたかさ」が確かにあるということを。

これからも信州たかやまワイナリーは、この地とともに歩みながら、新たな価値を生み出し続けていくことでしょう。その一杯一杯には、信州の大地と、造り手たちの変わらぬ情熱が、やさしく、そして力強く込められています。

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