日本ワインの“もうひとつの楽しみ方”
― 甲州、マスカット・ベーリーA、リースリング、アルバリーニョ、シラー、そしてブレンド ―

近年の日本ワインを語るとき、まず挙がるのはピノ・ノワールやシャルドネ、メルローといった国際品種のレベルが高くなったことかもしれません。
しかし、日本ワインの魅力はそれだけではありません。
むしろ、日本ワインを深く楽しむほど、「それ以外」の品種や、複数品種のブレンドにこそ、日本らしい個性と面白さが詰まっていることに気づきます。
甲州、マスカット・ベーリーAはもちろん、リースリング、アルバリーニョ、シラー。
そして単一品種だけではなく、ブレンドという表現。
この“周辺”に見えるものこそ、日本ワインが世界と違う角度で輝く理由なのかもしれません。
世界のワインは「品種」で語られてきた
世界のワインの多くは、
品種と産地が結びついて語られてきました。
リースリングならドイツやアルザス
アルバリーニョならスペイン
シラーならローヌやオーストラリア
ブレンドならボルドーやローヌ、スーパータスカン
こうした“型”があるからこそ、
私たちはワインのスタイルをイメージしやすくなっています。
一方で、日本ワインはその型をそのままなぞるのではなく、
日本の気候・食文化の中で、別の答えを出し始めています。
日本の甲州
― 世界に一つしかない、日本の白ワイン ―
甲州は、日本固有のぶどう品種として、日本ワインを語る上で欠かせない存在です。
世界の有名な白ワインが、果実味や樽香、香りの華やかさで語られることが多いのに対し、甲州は繊細さと旨み、そして食卓での完成度で語られます。
柑橘や白い花、ほのかな苦み。
そして和食と合わせたときに感じる“収まりの良さ”。
甲州は、日本ワインが世界に提示できる最も説得力のある答えのひとつです。
日本のマスカット・ベーリーA
― “赤の親しみやすさ”という武器 ―
マスカット・ベーリーAは、日本で生まれた赤ワイン用品種です。
海外の赤ワインが「骨格」や「濃さ」で語られがちなのに対し、この品種は軽やかさと果実の香り、そして親しみやすさが魅力です。
たとえば、
焼き鳥
すき焼き
煮物
醤油を使った料理
こうした日常の食卓に、驚くほど自然に寄り添います。
「赤ワインは難しい」と感じる人にとって、日本ワインの入口になり得る重要な存在です。
日本のリースリング
― 香りよりも、酸と余韻が美しい ―
リースリングは本来、
冷涼産地でこそ真価を発揮する品種です。
ドイツのリースリングは、
甘口から辛口まで幅広く、酸が強く、熟成で香りが変化していきます。
アルザスのリースリングは、より辛口で骨格があり、食事と合わせやすいスタイルです。
日本のリースリングは、このどちらかをコピーするのではなく、香りを誇張せず、酸と透明感で勝負する方向に魅力があります。
特に和食に合わせると、リースリングの酸が料理の塩味や出汁を引き締め、余韻をすっと伸ばしてくれます。
日本のアルバリーニョ
― 日本の海と相性が良すぎる白 ―
アルバリーニョは、本来スペイン北西部、海沿いの冷涼産地で造られる品種です。
柑橘、塩味、ミネラル。
魚介と合わせて完成する白ワインとして、世界的に人気があります。
この品種が日本で注目されるのは自然なことです。
なぜなら日本は、海と魚介の文化が圧倒的に強い国だからです。
日本のアルバリーニョは、香りが華やかでありながら、酸が整っていて、刺身や貝、寿司などと合わせたときに、驚くほど美しくまとまります。
日本のシラー
― “濃さ”より“スパイス”が生きる赤 ―
シラーは、世界ではローヌやオーストラリアで有名です。
濃く、黒く、スパイスがあり、力強い赤ワインになる品種です。
しかし日本のシラーは、世界の「濃厚シラー」とは少し違います。
果実味はあっても、重すぎない。
その代わり、胡椒やハーブのようなニュアンスがきれいに出て、料理と合わせたときに真価を発揮します。
たとえば、
ジンギスカン
焼肉
山椒を効かせた料理
味噌を使った煮込み
こうした料理と合わせると、シラーのスパイスが料理の旨みを引き上げてくれます。
ブレンドという日本ワインの可能性
― “正解がない”から面白い ―
日本ワインは、単一品種だけでなく、複数品種のブレンドによって魅力を作るスタイルも増えています。
世界では、ブレンドには明確な伝統があります。
ボルドーのブレンド
ローヌのブレンド
トスカーナのブレンド
しかし日本のブレンドは、それらの模倣ではなく、日本の気候の中でぶどうをどう成熟させるか、どう味わいを整えるか、という現実的な問いから生まれています。
そしてそこに、日本ワインならではの柔軟さと創造性があります。
ブレンドは、「単一品種では届かない完成度」を作るための、日本ワインの重要な選択肢になっています。
国際的な評価と、これから
日本ワインの国際的評価は、
ピノ・ノワールや甲州を中心に語られることが多いかもしれません。
しかし今後は、
「日本にしかない品種」
「日本の食文化に最適化された品種」
「日本らしいブレンド」
こうした領域が、より強い価値になっていくはずです。
世界のワインが、より冷涼で、より繊細で、より食事に寄り添う方向へ向かう中で、
日本ワインの強みは確実に重なってきています。
まとめ
日本ワインの魅力は、世界の有名品種を日本で造ることだけではありません。
むしろ、甲州、マスカット・ベーリーA、リースリング、アルバリーニョ、シラー、
そしてブレンド。
こうした領域にこそ、日本ワインが日本ワインである理由が詰まっています。
もし日本ワインをもう一歩深く楽しみたいなら、ぜひ次は、「知らない品種」や「ブレンド」を手に取ってみてください。
そこにはきっと、世界のワインとは違う角度から見える、日本ワインの面白さがあります。