2月「鮟鱇(あんこう)×ワインペアリングイベント」開催レポート

2026年2月18日

冬の味覚“鮟鱇”と和食に合わせるワイン

〜日本ワインとマキコレワインが導き出す、新たなペアリングの可能性〜

ワインと和食のペアリングというテーマにおいて、「魚介には白ワイン」という固定観念は、今もなお根強く残っています。しかし、実際の料理に寄り添ってワインを選ぶと、その可能性は想像以上に広がっていることに気づかされます。先日、私が店長を務めるWineBar幸では、1階にある和食店「尾張会席 誠名」様とのコラボレーションイベントを開催し、“和食に合わせるワイン”というテーマのもと、冬の味覚である鮟鱇(あんこう)を主役にしたペアリングコースをご提供しました。

今回のメイン食材は鮟鱇。淡白でありながら旨味が豊富、さらに部位ごとに表情が大きく変わるこの食材は、実はワインとのペアリングにおいて非常に懐の深い存在です。


濃厚なあん肝を引き締める、マキコレ・スプマンテの酸

先付として登場したのは、濃厚な旨味が魅力の「あん肝 ポン酢」。ここに合わせたのは、イタリア・ヴェネト州の生産者 カ・エルト が手掛けるソアーヴェ・スプマンテ・ブリュットNVです。

こちらは、いわゆる「マキコレワイン」のひとつ。マキコレワインとは、ワインインポーターである 金井麻紀子 氏が自ら現地を訪れ、栽培・醸造において自然なアプローチを実践する家族経営の生産者のみを厳選して日本へ紹介しているワインのことを指します。

土地の個性や造り手の哲学を大切にしたワインは、過度な抽出や技術に頼らないため、料理に寄り添う“やさしさ”を備えています。このソアーヴェ・スプマンテも例外ではなく、ガルガーネガ由来のシャープな酸とミネラル感が、あん肝のクリーミーな質感を見事に引き締め、ポン酢の柑橘のニュアンスとも美しく共鳴しました。


刺身に寄り添う、日本ワインという選択肢

続く造りは、金目鯛とヤリイカ。この繊細な刺身の盛り合わせに合わせたのが、長野県東御市の ヴィラデスト ワイナリー が造る「ヴィラデスト ピノ・グリ2024」です。

今回のペアリングの中核を担ったこの一本は、日本ワインの実力を改めて実感させてくれる存在でした。ピノ・グリは灰色がかったピンク色の果皮を持つブドウ品種で、造り手の意図によってさまざまなスタイルに仕上がりますが、ヴィラデストのピノ・グリは、ややピンクを帯びた外観に、あんずや黄桃を思わせる芳醇なアロマ、そして凛とした酸を兼ね備えています。

特筆すべきは、その“骨格”です。しっかりとした果実の厚みと酸のバランスが、金目鯛の脂の甘みや、ヤリイカの繊細な甘味、そして海のミネラル感を優しく包み込みます。刺身という非常に繊細な料理に対して、日本の風土で育まれた日本ワインがここまで自然に寄り添うのかと、参加されたお客様からも驚きの声が上がりました。


出汁の旨味を引き立てるロワールのミネラル

お椀には、鮟鱇と白菜の出汁仕立て。ここでは、フランス・ロワール地方の ドメーヌ・オーペロン によるトゥレーヌ・シュノンソー・ブラン2023をセレクトしました。こちらもまたマキコレワインのひとつ。

ソーヴィニョン・ブランの持つフレッシュな酸とアロマティックな香りが、鮟鱇の旨味が溶け込んだ出汁の透明感を一層引き立てます。自然な栽培から生まれるピュアな果実味が、和食の繊細な味わいと調和する好例となりました。


鮟鱇の唐揚げに赤ワインという提案

そして揚げ物は、鮟鱇の唐揚げ。ここではあえて赤ワイン、アルザス地方の ドメーヌ・ヴァンサン・フライト によるピノ・ノワール ステインウェッグ2022を合わせました。こちらもマキコレワインです。

小さな野ばらや木苺を思わせるチャーミングな赤系果実の香りと穏やかなタンニンが、唐揚げの香ばしさに寄り添いながら、油分を優しく流してくれる役割を果たしました。


今回のイベントを通して改めて感じたのは、「和食に合わせるワイン」は決して特別なものではなく、料理の旨味や質感を理解することで、自然と導き出されるものだということです。そして、日本ワイン、とりわけヴィラデスト ワイナリーのピノ・グリのように、日本の食文化と同じ風土の中で生まれたワインは、和食との親和性において大きな可能性を秘めています。

鮟鱇という冬の味覚が、日本ワインと、そして金井麻紀子氏が日本へ紹介するマキコレワインによって新たな表情を見せてくれた、非常に意義深い一夜となりました。今後も和食に合わせるワインの魅力を、多角的に提案していきたいと思います。


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